「でも全っ然違ったわ」
「……」
「お互い不器用ですれ違ってただけで、ちゃんと愛されてて大事にされてた」
「理人」
「あぁ…マジきめぇ、俺」
考えれば考えるほど暗い方へと沈んでいく自分が嫌だ。
「生まれてすぐ捨てられた俺とアイツじゃ、そもそも生きてる世界が違ぇのに」
夏休みなんてとっくに終わっているはずだ。
あんなに「理人さん、理人さん」と呼んで俺に会いに来ていた彼女はあの日から来ていない。
それが、証拠だ。
「お前は昔からそうだよな」
「は?」
「いつまで過去に引っ張られてんの?」
だって、そうだろ?
「…だからお前はずっと“可哀想”なんだよ」
冷たい言葉が遠慮なく突き刺さった。
その言葉を言い残して奏汰は帰って行った。

