「最近翠ちゃんの事見かけなくなったし、お前も出掛けてるような感じしないし」
「だから何だよ」
「喧嘩でもした?」
「喧嘩するほど仲良くねぇし」
「……ほんっと、分かりやすいお前」
フッ、と笑って見せたのは普段見れない奏汰の年上としての顔。
理人?と名前を呼ばれ答えを急かされる。
「嫌になったんだよ、全部!」
「嫌になったって、」
足元の小さな石ころを蹴るとフェンスに当たってカシャン、と小さく音を立てた。
「アイツ、俺に似てるって思ったんだよ」
「なんだそれ」と小馬鹿にして笑ってほしいのに、こういう時の奏汰は真面目で俺の話を静かに聞いている。
「何不自由なく育ってきたはずのに、俺と違って親がいるのに、いつも独りで寂しそうで…」
“寂しい”という事実に気付かない振りをして毎日をなんてことないように過ごしていた。
「……だからか、やたら気にかけてたのは」

