First Light.




9月になって数週間が経ち、もうすぐ10月に入ろうとしていた。

相変わらず依織くんにチクチクと怒られながら仕事して、朝方に家に帰って寝る。
…という生活を繰り返している。


そう、今までと何ら変わらない生活を。


翠の件の後、2日後くらいに何年ぶりかという久しぶりに風邪を引いた。


《この前はありがとうございました。》
《また最初からお母さんとやり直す事にしました。》


シンプルな文面でもその嬉しさが伝わってくる翠からのメール。


「おーい、理人?大丈夫か?」

「何が?」

「最近お前暗ぇから」

「別に何もねぇよ」


既読は付けずにそのまま電源を落とした。


「何もねぇって事はないだろ。また風邪か?具合悪いなら無理しなくていいんだぞ?」

「いや、すこぶる元気なんで」


元から心配性の依織くんが、最近やたらと俺の顔色を伺っているのが分かる。
なんなら、この間風邪を引いた時から。

昔から依織くんは察しがいいというか、鋭いというか。

翠の話題は1度も出ていない。