結局呼び出された理由の大半はその話だった。
どこで出会ったのか、どんな子なのかとニヤニヤしながら聞いてくる依織くん。
絶対に楽しんでいる。
「…あ、そういえば翠ちゃん今熱あるんだったよな。早く帰って看病してあげねぇとな!」
「………」
「…俺も会いたいなぁ、噂の翠ちゃん」
「絶対やめろよ。絶対来んな!」
おそらく名前は俺の様子を見に来た時に朱音から聞き出したんだろう。
「しばらく休んでいいから、しっかり…な!」
「保護者的目線だから」
「分かった分かった。ここも俺の奢りだから気にせず帰っていいぞ」
「話ってまじでこれだけだったのかよ。店でやりゃあいいじゃん」
「、うっせ。たまには2人きりで話すのもいいだろ。お前は寂しがり屋だからな」
「違ぇわ!」
なんだかなぁ、と思いつつ依織くんに促されるまま家に帰るとリビングのソファで翠がテレビを見ている後ろ姿が目に入った。
「熱は?」
ビクッと肩を揺らし勢いよく後ろを振り返って見えた表情。
…顔色も戻ってる。だいぶ熱が下がったんだろうな。
「下がりました。体もだいぶ楽になりました」
「そ、良かったわ」
─────『じゃあその子に彼氏が出来たらどうすんだよ』
彼女の視線を感じつつ、冷蔵庫に入っている水を取りだして喉に流した。
噎せそうになるのを堪えて飲み干した。
…違う、俺は保護者だから。
現に彼女をどうこうしようだなんて今まで1度もない。
神に誓って、1度も。

