後5分で着くというタクシーからの連絡に2人して外で待っていると、隣でソワソワとする翠の姿が視界に入った。
「…今日は勝手に来てしまって本当にごめんなさい」
あえて顔は見なかったが、声からして相当反省しているのが伝わった。
「俺結構マジでキレたよ」
俺のその言葉に息を飲む音が聞こえた。
…やっぱり言い過ぎたよな。
「久しぶりにあんな怒鳴ったわ」
「…」
「ごめん、大きな声出して。怖かっただろ」
「私が悪いから…」
素直なところはこいつの良いところだろう。
否定されなかった事に翠の顔を見て笑うとホッとしたような表情をしていた。
今回はまぁ奏汰が悪いので後で説教だな、と思いながらいつものように会話する。
「他に何か言われた?」
「何かって?」
「俺のこと」
「………何も言ってませんでしたよ」
…あぁ、多分奏汰あたりかな。
人の事をベラベラと話やがって。
空白のその絶妙な間に、こいつは分かりやすいなぁとつい笑ってしまう。

