今日は依織くんの機嫌が良かったのか、「もう上がっていいぞ」と言われ遠慮なく退勤して来た。
淡いオレンジ色の照明が零れている朱音の店に、安心してしまうのは毎日だった。
カランカラン、とドアを開けて相変わらず居る奏汰の姿にいつものように声をかける。
…いつもと違ったのはその隣に居ないはずの人が居た事だった。
「………は、?」
こんな真夜中に一体どうやってここに来たんだ。
っていうか、どうして。
「お前、なんでここに…」
「ぁ、……」
「俺が連れて来たんだよ」
「は?」
「前に理人が言ってたコンビニに行ったらたまたまこの子が居てさ」
「…俺そんな事言った記憶ねぇんだけど」
「あー、酔ってたからな。依織くんにめちゃくちゃ飲まされてた日だよ」
…あの日だ。
「チッ」
俺とは違って記憶が残るタイプの奏汰は面白そうにニヤニヤしている。
奏汰が聞いたという事は依織くんにも聞かれている。
という事は、朔良さんにも…。

