「まさか、藤咲の生徒だったとはね」
「いや、その…」
「藤咲女子ってお嬢様学校だろ?そんなお嬢様がクラブなんかに来てもいいわけ?」
「………」
「何?」
まさか睨まれるなんて思ってもいなくて驚いてしまった。
勝手に世間知らずのおとしやかな人間の集まりだと偏見を持っていたからかもしれない。
よく聞くと藤咲はお嬢様学校ではないらしい。
勘違いするなと怒られてしまった。
それから半ば無理矢理バイクに乗せて、家の近くだというコンビニまで送って。
奏汰達が知ったら絶対茶化されるだろうな、と思いながら彼女に学生証を返した。
このまま帰していいんだろうか。
…いや、きっとこのまま帰した方がいい。
俺はきっとこの子と関わるべき人間じゃない。
そんな心の中とは裏腹に体は勝手に動いて、帰ろうとした彼女の鞄を引っ張り引き止めてしまった。
「なっ、何ですか!?」
お礼と口封じの為か、彼女は渋々アイスを奢ってくれた。
コンビニの陰になっているブロック塀に腰を掛けてアイスの袋を開けた。

