「あっ、す、すみません!!俺、理人さんの連れだって知らなくてっ、」
「いや、俺は別にこいつとは…」
声をかけただけで逃げるようにどこかへ行った男達を見送り、ふと正面を見ると助けた女と目が合った。
俺の事を「誰?」とでも言いたげな表情に小っ恥ずかしくなり「あー…」と言葉にならない声を出す。
無意識に手首を触ったのを見て、大丈夫かと聞くと素直に大丈夫だと言われた。
冷やすには早い方がいいだろう。
バーカウンターで氷と袋を貰い、女にハンカチを借りようと声をかけると焦ったのかハンカチと一緒にバッグからポーチやら何やらを落とした。
…何やってんだこいつ。
あからさまなその挙動は内心面白かった。
慣れていないのが目に見えて、可愛らしいとまで思う。
「本当に助けてくれてありがとうございました」
何度目かのお礼を言われポケットから煙草の箱を取り出すと「翠!」という声が聞こえた。
目の前にいた女は振り返り後から来た奴と話している。
友達なのか、出口に向かっていく2人を煙草に火を付けながら目で追った。

