「もしかして、サボり魔なのは俺らに構ってほしいからか?」
「気持ち悪ぃ事言うなよ…」
「理人、口の利き方」
「すんません」
一段と不機嫌の依織くんとは裏腹にソファに寄りかかって俺らを見上げている朔良さんは愉快そうに笑っていた。
「あ、」
朔良さんのスマホの着信が鳴った。
多分、仕事の電話だ。
「悪いな、理人。俺もう行かねぇと」
「はい、」
「また来るよ。朱音んとこにも顔出すわ」
ゆっくりと立ち上がった朔良さんの後を追うように俺もついて行く。
階段を降りる前、いきなり朔良さんは振り返って俺の頭をガシッと掴んだ。
「だからサボんなよ」
「構ってほしいからじゃねぇし」
「そうだったな」
ゲラゲラと笑いながら降りて行く朔良さん。
この人は昔から変わらない。
俺には無関心かと思えばよく見ていてたまにこうして優しく接してくれる。
昔のまんま、歳をとっているだけ。
「あれ、依織くん?」
「…なんでもない。仕事に戻ってろ」
珍しく俺の後ろにいた依織くん。
何かを考えていたようで、ボーッとしていた。
俺が声をかけてハッとしたのか、その不機嫌そうな顔のまま俺の横を通り過ぎて朔良さんの後を追って行った。

