『…ったく。後住む所だけど、どうせそれも決まってねぇだろ。俺の家の部屋が空いてるからそこに住んでも構わねぇぞ』
『家は決まってる』
『あ?決まってる?何処だよ』
『朱音と奏汰と、3人で暮らすって決めてんだよ』
『あいつらと?』
『あいつらは俺にとって家族も同然なんだ。良いだろ、別に』
朱音と奏汰は一足先に施設を卒業し朱音は店を、奏汰は土木屋として働き一緒に住んでいる。
俺も何度か家に遊びに行った事がある。
決して広い家ではなくて、外観もお世辞にも綺麗だとは言えないけれど。
『それが今唯一楽しみにしてる事』
それからは依織くんに甘えて雇ってもらった。
朱音の店の土地を持っている大家が依織くんのよしみで2階まで貸してくれる事になり、俺はそこに住むようになった。
実際、2人が住んでいたアパートは3人で住むには狭すぎたのだ。
…久しぶりに再会した時になんとなく勘づいてはいたけれど依織くんと朔良さんの職業は裏社会をどうの、というものらしく何かと融通が利くらしい。

