『俺の名前は八代依織。で、このおじさんは羽場朔良さん』

『イオリとサクラ?』

『“さん”を付けんかい』



コツン、と小突かれた力は今とは比べ物にならないくらい優しかった。

施設の子達が2人に懐くまでの時間はかからなかった。
いつしか2人は俺達にとって当たり前になっていて、今日は来られないらしいと知らされると寂しがった。

朝に来て、一緒に遊んで夜になったら何処かへ帰って行く。


同じ施設出身の朱音と奏汰はこの時から一緒に居て、それはまるで兄弟のように扱われた。

そんな奏汰に1度言われた事がある。



『依織くんと朔良さんは理人の事を1番に可愛がってる。きっとお前は2人のお気に入りなんだ』



それは純粋に思った事なのか嫉妬なのかは分からない。
自分では気付かなかった事を指摘され、あまり悪い気持ちにはならなかった。

その特別扱いが俺の優越感を誘い、嬉しかったからだ。