依織くんや朔良さんと初めて出会ったのは確か、俺が5歳くらいの時だったと思う。
物心ついた時にはもう既に俺は施設にいた。
血の繋がりがない同年代の子達と何の疑いもなく過ごしていたあの頃は純粋だった。
そんな5歳の頃、ある日ピシッとしたスーツを着た男がやって来たのを覚えている。
まず施設に外からお客さんが来るのは珍しかったし、その場に居た全員が『あの人達は誰だ』と興味津々だった。
施設長と中に入り、しばらくするとその2人は辺りをキョロキョロしながら外に出てきた。
そして周りの子達の視線を無視して2人は俺の目の前で立ち止まった。
『…り、ひと?』
呟くように依織くんが俺の名前を呼んだ。
不安ながらにずっと見上げていると泣きながら強く抱き締められたのだ。
『…どうしたの?』
『……っ、ごめんっ、ごめんな、』
どうしてこの人が泣いているのか、戸惑いながら見上げたのはその背後に立っていた朔良さん。
朔良さんは俺達を苦しそうな表情で見ていた。
思い出せば懐かしい。
当時どうして泣いたのかを依織くんに聞いても『覚えてない』の一点張りで教えてはくれない。
その日をきっかけに2人は定期的に施設に来るようになった。
疑問に思った俺達がおばさんに聞くと、2人はボランティアだと言われた。

