「おー、理人。またサボりか?」
「違ぇわ、休憩!」
ついて行くとそこはバーカウンターだった。
カウンター内にいるスタッフと仲が良いのか、友達のように話している。
「氷だけくれよ」
「氷?何に使うんだよ」
「冷やすんだよ。ビニールか何かに入れてくれると助かるんだけど」
沢山の氷が入ったビニール袋を渡されて彼は私の方へと振り返った。
「あんた、ハンカチ持ってねぇの?」
「えっ、…あ、は、持ってます」
ハンドバッグから慌ててハンカチを取り出すとつられて中の物がいくつか飛び出てしまった。
床にちらばった私物を急いでバッグの中に戻し、立ち上がってハンカチを渡すと彼は呆れた表情をしていた。
「そんな慌てなくていいっつの」
「すみません…」
私からハンカチを受け取った彼は氷の入った袋を丁寧にハンカチに包んで私の手首に当ててくれた。
「ここに来るの初めてだろ」
「はい、クラブ自体も初めてで。…やっぱり浮いてますか」
「いや?なんか初々しい通り越して挙動不審だから」
「きょどっ、……」
そんなにおかしかったのかな…。
そんな風に考えているとふんっと鼻で笑われた気がした。

