「理人さんに未読無視されて、会えなくて、私がどんな気持ちだったか知らないでしょっ、」
「翠、」
視界が涙でゆらゆらと揺れている。
カウンターを挟んで目の前には理人さんがいるはずなのにボヤけてよく見えない。
「っ、好きなんです…」
言葉にしてしまったら、止まらなかった。
「あのコンビニでなんでもない話をするのも、たまに口が悪くなるところも、素直じゃなくて不器用なところも好きなんです」
私との今までを無かった事にしないでほしい。
「……好きなのっ、」
独りで寂しさに気付かない振りをしていた私を救ってくれたのは誰でもない理人さんだ。
そんな私に自分を重ねてしまっていたんなら、今度は私が助けてあげたい。
暗い方へと1人で沈んでいく彼を明るい方へ。
「………帰れ」
いつから私は理人さんの事を傷付けてた?
苦しませていたんだろう。
冷ややかな声に冷ややかな視線。
ガチャン、とドアは無慈悲に閉められた。

