「すみません、今日の夜は営業休みで……、」
カランカラン、というドアベルの音に気付いたのかカウンター奥のドアから出て来たのは奏汰さんでなく理人さんだった。
「え」
「……なんで居るんだよ」
「…奏汰さんに、呼ばれて…」
ブブッと右手に持っていたスマホが震え画面を見ると奏汰さんからメールが来ていた。
《俺と話すより直接本人と話し合った方が早いと思うから!頑張れ!》
…嘘でしょ。
「こんな時間にまた1人で?」
「まだ外は明るいです」
「いやもう薄暗ぇし」
「……今日仕事なんじゃなかったんですか」
「休みだけど」
淡々とした返事に心がザワついていく。
…なんか、ものすごく距離を感じる。
「奏汰になんて言われて来たのか知らねぇけど、見ての通り今日は休みだから」
「……」
「まだ電車もバスも動いてんだろ。俺は送ってってやらねぇからな」
じゃ、と再び2階へと続くドアを開けた理人さんの背中に向かって叫んだ。

