「…貴方にも迷惑かけてしまったみたいね」
「いえ、僕は何も」
「ありがとう」
玄関で理人さんはお母さんにお礼を言われている時、雪さんが纏うその違和感を私は微かに感じていた。
「…理人さん、外まで送ります」
「いーよ。ついて来なくて」
「駄目ですよ。理人さんのおかげで仲直り出来たので」
「…あっそ」
理人さんのバイクが停めてあるあのコンビニまで。
「…良かったな、仲直り出来て」
「ほんとに、理人さんのおかげです」
「すれ違ってただけなんだな。親子って案外ムズいのな」
「お恥ずかしながら」
ふと気づいたのは、理人さんが道路側を歩いているという事。
…こういう何気ないところが理人さんのいい所だよなぁ。
「仲直り出来た記念に今度アイス奢ってやるよ」
「え〜、またアイスですか?」
「文句あんならこの話は無しだな」
「嘘嘘!奢られます!棒じゃないカップの、高いやつね!」
「くっそ生意気な奴だな」
家からコンビニまでの距離がこんなに短いと感じたのは初めてかもしれない。
一瞬だった。

