「私必要とされてないって思ってたから」
「そんな訳ないでしょ!!翠は私が産んだ子供なの、大切なの!必要じゃない訳ないでしょ!」
お母さんの大きな声を聞いたの初めてかもしれない。
こんな風に今まで感情的になった事なんてなかったから。
「……あの男の人は良い人?」
「…うん…。とても、優しい人よ」
「そっか。良かった」
「翠、」
ガタ、と椅子から立ち上がったお母さんは回り込んで私の隣に立った。
「今まで辛い思いをさせて本当にごめんなさい。こんな私を、許してほしい」
深々と頭を下げたお母さんのその行動に戸惑いが隠せなかった。
反射的に理人さんの方を見ると、いつも通りふわりと微笑んでいる。
「私の方こそ、ごめんなさい」
これから今まで出来た隙間を埋める事が出来るだろうか。

