いつも君のとなりで


それから、わたしたちが初めて身体を重ね合わせ一つになったのは、三回目のお泊まりの時だった。

陽向くんは"覚悟してくださいね"なんて言っていたけれど、陽向くんは優しくわたしに触れ、「俺に触れてください。全てに触れて欲しいです。」なんて言うので、わたしは躊躇せずに陽向くんに触れた。

陽向くんなら大丈夫。
信じられる。

その思いから、なぜか不思議と手汗はいつもよりも控えめだった。

陽向くんのぬくもり、愛情を全身で感じ、わたしは幸せで心が満たされていった。

そしてわたしたちは何度か愛し合い、疲れ果て、ありのままの状態で抱き合って眠りにつく。

それが幸せで、幸せなんて言葉じゃ足りないくらい、心も身体も今まで負ってきた傷が癒され、陽向くんがとなりに居てくれるだけで今までに感じたことのない特別な感情を覚えることが出来たのだ。


あれから数ヵ月後、総務課長の志田課長は定年退職し、わたしが課長へと就任。

それと同時に陽向くんは、営業一課のチーフを任されるようになり、お互い忙しくなり、会える時間が以前よりも減ってしまった為、わたしたちは思い切って同棲を始めた。

会社では「松雪課長」「糸師チーフ」と呼び合うが、プライベートになれば「奈央さん」「陽向くん」と呼び合う。

そして気付いたことがあるのだが、陽向くんと付き合うようになってから、多汗症が治ったわけではないが、かく汗の量が若干減った気がした。

もしかしたら、それは陽向くんに"触れる"ことに対して、不安がなくなったからかもしれない。

わたしは、もうとなりに居てくれるのが陽向くんじゃないとダメだと確信していた。

陽向くんのとなりでなら、笑っていられる、弱い部分も見せられる、そして何の不安もなく触れられる。

そう思いながら、わたしは陽向くんの隣に座り、陽向くんの横顔を見つめた。

「ん?奈央さん、どうしたんですか?」
「ううん、何でもない。」
「何かありました?」
「違うの、陽向くんが愛おしすぎて、見てただけ。」

わたしがそう言うと、陽向くんはハハッと笑ってわたしを抱き締め、それからわたしの額にキスをした。

「俺も、誰かをこんなに愛おしく想ったことはありません。」

そう言うと、陽向くんはわたしを真っ直ぐに見つめ、こう言ってくれた。

「奈央さん、これからも奈央さんのとなりに居させてくださいね。」




―END―