すると、糸師くんは公園の歩道の先に見えたベンチを指差し、「あ、あそこで休憩しませんか?」と言った。
そのベンチは、大きな木の下で雨から守られ、濡れずに座れる状態にあった。
風もなく、サーッと音を立てながら真っ直ぐに落ちてくる雨。
わたしたちは、その雨を眺めながらベンチに並んで座った。
「寒くないですか?」
糸師くんがわたしに訊く。
わたしは「うん、大丈夫。」と返事をしたが、糸師くんはわたしの手を取り握り締めると「手、冷たいですよ?」と言った。
「多汗症ってね、手が冷たくなりやすいの。汗をかいた後とかは特に氷みたいに冷たくなる。」
「じゃあ、俺が温めますね。」
そう言ってわたしの両手を、糸師くんの両手で包み込み、温めてくれる。
糸師くんの手は大きくて、温かかった。
「嫌じゃないですか?」
わたしの気持ちを気にして、糸師は訊いてくれた。
「うん、嫌じゃない。」
わたしがそう答えると、糸師くんは微笑み「良かった。」と言い、わたしの手を温め続けてくれた。
「松雪主任。」
「ん?」
「こんな場所で申し訳ないですけど、言わせてください。」
え、それって、、、
「俺と、付き合ってくれませんか?」
糸師くんは柔らかい声で真っ直ぐな瞳でそう言った。
わたしは、その真っ直ぐな糸師くんの瞳を見つめたあと、照れて顔を伏せてしまったが、すぐに顔を上げ、糸師くんを見ると「、、、はい、宜しくお願いします。」と返事をした。



