いつも君のとなりで


その後わたしたちは、近くのカフェに入り、珈琲とサンドイッチを注文して少し遅めの昼食を摂りながら、さっき観た映画の感想を語り合った。

それから外に出ると、まだ降る雨の中、傘をさして二人で広い公園を散歩した。

天気が良ければ、きっとランニングしている人や犬の散歩をしている人などを多く見かけるであろう公園だが、生憎の雨で公園を歩くのはわたしたちしか居なかった。

「そういえば、俺が松雪主任を好きになった理由って、話したことありましたっけ?」

突然の糸師くんの言葉に驚いたが、わたしは「ううん、無いかな。」と答えた。

「俺、元々社内で松雪主任を見掛けたことはありましたけど、いつもキビキビ動いてて、周りからの評価も高くて、仕事が出来るかっこいい女性って印象でした。でもあの日、、、あの居酒屋で見た松雪主任は、会社で見る松雪主任とは違って、淋しげで明らかに元気が無くて、つい声を掛けてしまいました。」

糸師くんの言葉を聞いて、わたしもあの日のことを思い出した。

そうだ、あの日、、、糸師くんから声を掛けてくれたんだよね。

「ツラい話を、課も違えば部署も違って、挨拶くらいしかしたことない俺にしてくれて、、、ツラくて泣きたいはずなのに、無理に笑顔を作って"話を聞いてくれてありがとう"って言う松雪主任を見たら、、、あぁ、俺がこの人を作り笑顔じゃなくて、本当の笑顔にさせたい、俺がこの人の弱い部分を強がらずにさらけ出せる存在になりたいって思ったんです。」

糸師くんはそう言うと、優しい表情をしてこちらを向いた。

「いつも松雪主任のとなりで、支えたい、そばに居たいと思いました。」

糸師くん、、、
そんな風に思っててくれたんだ、、、

わたしは背の高い糸師くんを見上げると、「ありがとう。」と言い、糸師くんの腕に絡めていた手を離すと、傘の柄を持つ糸師くんの手に自分の手を重ねた。

もう、戸惑わずに糸師くんに触れられる気がした。
だから思い切って、糸師くんの手に触れてみた。

糸師くんは驚きつつも、微笑みを見せ、「松雪主任の手って、小さくて可愛いですよね。」と言ってくれた。