いつも君のとなりで


「糸師くんは、ちゃんとわたしと向き合ってくれる。わたしの話を聞いてくれて、わたしが欲しい言葉をくれて、いつも隣で元気付けてくれて、、、わたしの為に毒だって吐いてくれる。糸師くんになら、弱い部分も見せられる。それに、、、」

わたしはそう言うと、自分の手のひらを見つめ、手に滲む光る汗を握り締めた。

「わたしの病気も受け止めてくれてる。」

そう言うわたしの言葉に広人は目を逸らした。

それも当然だ。
広人は、わたしの病気を"気持ち悪い"と思っていたのだから。

「触れられることに抵抗があるわたしに、どうしたらわたしが気にならないか、考えながら接してくれる。広人は、、、わたしを"気持ち悪い"って、思ってたんでしょ?」
「、、、ごめん。」
「いいの、自分でもそう思ってたし。」

わたしはそう言うと、汗に濡れた手のひらを広人に向けて見せた。

「でもね、こんな手でも、、、糸師くんは、触れようとしてくれるの。わたしが糸師くんに"気持ち悪い"って思われてないって、信じられるようになるまで"頑張る"って言ってくれた、、、凄く嬉しかった。」

わたしがそう言うと、広人はフッと笑い、「何だよ、惚気かよ。」と言った。

「糸師、、、あいつ外見もイケメンだけど、中身もイケメンなのかよ。かっけぇな。」

広人はそう言ったあと、わたしを真っ直ぐに見ると「奈央。」とわたしの名前を呼んだ。

「糸師と、、、幸せになれよ。応援してる。」
「ありがとう。広人こそ、今度は"キープ"とか言わない女見つけなさいよ。」
「あぁ、そうするよ。」

そう言い、わたしたちは笑い合った。

広人と笑い合ったのは、いつぶりだろう。
今日でお互いを下の名前で呼ぶのは終わり。

これからは、お互い何の未練も恨みもない、ただの同僚だ。