いつも君のとなりで


「それは、何に対しての"ごめん"?」

わたしがそう訊くと、広人はゆっくりと頭を上げ、「奈央を、、、たくさん、傷付けたから。」と視線を床に落としながら言った。

「今更だけど、そうね、、、たくさん傷付けられた。」
「本当に、申し訳なかったと思ってる。」
「、、、話しはそれだけ?それなら戻るけど。」

わたしがそう言い、給湯室から出ようとすると、広人は「俺、、、馬鹿だよな。」と呟くように言った。

「俺、、、悔しかったんだ。奈央に嫉妬してた。仕事が出来て、皆からの信頼もあって、上の人たちからの評価も高くて、、、それで主任?俺と同期なのに、、、女なのに、、、何で俺よりも上の立場になったんだ?って、面白くなかった。」

わたしは給湯室のドアの前で足を止めたまま、広人の言葉を黙って聞いていた。

「でも、、、奈央を見てて分かった。奈央は、俺なんかよりも器が大きくて、強くて、自分だけじゃなく周りにも気を配れる、、、俺は奈央の真似なんか出来ない、、、主任を任されて当然だよな。」

広人はそう言うと、「俺、かっこわりぃ。」と投げやりにフンッと笑った。

わたしはクルッと向きを変え、広人の方を向くと「わたしを見てて分かった?何も分かってないじゃない。」と言った。

「えっ?」
「わたしは、、、器なんか大きくない、強くもない、自分のことだけで精一杯の時もある。これでも、、、必死に努力してきたつもり。元々、そんな出来た人間なわけないでしょ?」

わたしがそう言うと、広人は目を見開きわたしを見つめた。

「広人は、、、ずっと、わたしと向き合ってくれなかったよね。だから、すれ違ってばかりで、こんな結果になったんだよ。」
「、、、悪かった。」
「でも、、、広人と別れて、正解だったかも。」
「、、、糸師と付き合ってるんだろ?」

広人の言葉にわたしは首を横に振り「付き合ってないよ。」と言い、それから「でも、、、惹かれてる、糸師くんに。」と自分の気持ちに素直になって言った。