いつも君のとなりで


その後、花村さんが戻って来たのは10分後のことだった。

悪怯れる様子もなく、戻って来て自分のデスクにつくと、スマホをいじり始める花村さん。

すると、広人が「花村さん、スマホをいじる前に自分がやるべき業務は終わったの?」と言った。

花村さんは目だけで広人の方を見ると「わたしがやるより、松雪主任と田岡チーフがやった方が早いじゃないですか?」と言い、スマホを手放そうとしなかった。

広人はそんな花村さんの言葉に溜め息をつくと、もう諦めたようにそれ以上は何も言わなかった。

そして、休憩時間になると、糸師くんが「松雪主任、一緒に休憩行きませんか?」と事務所まで迎えに来てくれた。

「うん、行く。」

そう言ってわたしはバッグを持ち、糸師くんの元へ歩み寄る。

「今日、またあのパスタ屋さん行きません?また行きましょうって言ってから、行けてなかったので。」
「うん、いいね。じゃあ、あのパスタ屋さん行こうか。」

糸師くんとそう話しながら、エレベーターで降りて、ビルの外へ出る。

わたしは空を見上げると、自然と溜め息を吐いてしまった。

「どうしたんですか?何か悩み事でもあるんですか?」
「うん、、、ちょっと、花村さんのことでね。」
「花村さん?あの人がどうしたんですか?」
「仕事もしないで、サボり癖があって、、、注意しても全然ダメなの。周りの総務の人たちからも不満の声が出てるし、どうにかしないといけないとは思ってるんだけど、、、」

わたしがそう言うと、糸師くんは少し何かを考えてから「俺、一つだけ良い案があるんですけど、、、聞きます?」と言い、わたしは「え、何?!」と糸師くんの"良い案"を聞いてみることにした。