それから、糸師くんは以前のように社内でも接してくれるようになり、周りの人たちから「関係戻ったのかな?」「やっぱり松雪主任には敵わないかぁ。」と言う言葉がチラホラ聞こえてくるようになった。
一方、広人と花村さんの関係はあれから修復することなく、どうやら別れたらしい。
しかし、花村さんは懲りることなく、他の課の男性社員に声を掛けては気に入られようとしていて、仕事の方は全くだ。
花村さんに関しては、何をしに会社に来てるの?といった感じで正直困り果てていた。
「あのぉ、松雪主任。」
そう静かに話し掛けてきたのは、隣のデスクの経理部の下坂さんだ。
「ん?どうしたの?」
「いいんですか?花村さん、、、あんな調子で。」
「あぁ、、、」
「さっきお手洗いにって席を立ってから、もう20分は戻って来てませんよ?どこかでサボってるんじゃないですか?」
確かに、「お手洗いに行ってきます!」と言って事務所を出てから、20分は戻って来ていない。
花村さんは、総務課の社員たちの間でも不評で、どうにかしないといけないのは分かっているのだが、まだ得策が見つかっていなかった。
「わたしもどうしたら良いか考えてはいるんだけど、、、。今度、課長に相談してみるね。」
「これじゃあ、給料泥棒ですよ。仕事もしないで、松雪主任と田岡チーフに負担かかってるじゃないですか。」
「わたしは大丈夫だけど、田岡チーフに負担をかけてるのは良くないわよね。」
「いやいや、松雪主任が一番仕事量多いじゃないですか。花村さん、総務にいらないですよ。」
わたしは「まぁまぁ。」と何とか苛ついている下坂さんを宥め、花村さんをどうするか、早めに決断しなくてはいけないなぁ、と思ったのだった。



