「それで、、、昼間のお返事は?」
わたしの手を握り締めながら糸師くんが訊く。
わたしは「その前に、、、一つ確認したいことがあるんだけど。」と言った。
「何ですか?」
「最近、、、糸師くん、色んな女子社員から声掛けられてるじゃない?他の人とも、デート、、、してるのかなって。」
わたしがそう訊くと、糸師くんは「あぁ、、、」と溜め息をつくように言い、少し困ったような表情で「確かにお誘いは受けてますが、全部お断りしてますよ。」と答えた。
「本当に〜?」
「本当ですよ。正直、いちいち断るのも疲れてきてて、、、」
「モテる男は大変ね?」
「だからってわけでもないですが、、、以前みたいに、堂々と松雪主任にアプローチしてもいいですか?」
「えっ。」
「今度は仕返しの為じゃなくて、俺の個人的な気持ちで。」
糸師くんの、個人的な気持ちで、、、?
「次は、俺が松雪主任に振り向いてもらって、おしぼり無しでも手を繋がせてもらえるようになるのがミッションです。」
糸師くんの言葉は、真っ直ぐですんなりとわたしの心に入ってくる。
わたしは「うん。」と頷くと、「糸師くんと、デートしたい。」と答えた。
すると糸師くんは、今までに見たことがない程の嬉しそうな微笑みを見せると、「ありがとうございます。」と言い、おしぼり越しに手を繋いだわたしたちの手に視線を向けると「いつか、この"おしぼり"という障害を無くしてみせます。俺は今までの男とは違うって、、、信じてもらえるまで、頑張りますよ。」と強く誓っていたのだった。



