いつも君のとなりで


「、、、松雪主任は、今のままでいいと思います。」
「でも、、、」
「松雪主任は、あの会社に必要な人間です。松雪主任は知らないと思いますけど、うちの課長、、、営業部に松雪主任が欲しいと、総務課長に話を持ち掛けていたことがあるんですよ?うちの課長だけじゃなく、商品開発部の課長もです。それだけ、色んな課から評価されて必要とされてる人って、松雪主任くらいだと思いますよ。」

え、、、そんな事、初めて知った。

必要とされてる、、、こんな、わたしが?

「電話の一つ壊したくらいで、会社に損害が出るわけじゃないです。松雪主任を失った方が、会社的には損害に値すると思いますよ。」

糸師くんはそう言うと、わたしの手に糸師くんの手を重ねた。

わたしは反射的に手を触られたドキッとしてしまった。
すると、わたしの反応に気付いた糸師くんは「やっぱり、気になっちゃいますか?触れられることに。」と言った。

「うん、、、どうしても、触れられると"気持ち悪い"って思われるんじゃないかって、思っちゃって、、、」
「じゃあ、、、これなら、どうですか?」

糸師くんはそう言うと、わたしの手のひらにおしぼりを乗せ、その上から糸師くんの手を重ねて、ギュッと握り締めてくれた。

「これなら気にならないんじゃないですか?俺は、おしぼり無しでも平気ですけどね。」

わたしたちの手に挟まれるおしぼり。
でも、なぜか不思議と糸師くんのぬくもりが感じられて、多汗症のせいで今まで手を繋ぐということを避けてきたわたしにとっては、新鮮でドキドキするものだった。

「ありがとう、、、糸師くん。これなら、気にならない。」

わたしがそう言うと、糸師くんは「良かった。」と微笑み、わたしは糸師くんの手をおしぼり越しに握り返したのだった。