いつも君のとなりで


糸師くんの言葉に、わたしはフフッと笑うと「確かに、、、糸師くんが居なかったら、わたし酔い潰れてその辺の道端で寝転がってたかも。」と言った。

「それは困ります。だから、俺が居る時にしてください。それから、、、他の男に、松雪主任が弱ってる姿、見せたくないんで。見せるのは、俺だけにしてください。」

糸師くんはそう言うと、店員さんが持って来たおしぼりで手を拭き、それから生ビールを注文していた。

「はい、、、わかりました。」

わたしがかしこまった感じでそう言い、チラッと糸師くんの方を見ると目が合い、そしてハハッとお互いに笑い合った。

今、わたしの隣に糸師くんが居る。

やっぱり糸師くんと一緒に居ると、落ち着く、、、隙間風が吹いていた心が埋まって行く、、、そんな感じがした。

「それで、今日は何で元気がなかったんですか?」
「あぁ、、、」
「また、田岡チーフか、花村さんが?」
「ううん、違うの。あの二人は、最近あまり上手くいってないみたいだし、何も言ってこない。」
「じゃあ、どうしたんですか?」

糸師くんにそう訊かれ、わたしは「、、、水没させちゃったの、自分のデスクの電話。」と言い、一つ溜め息をついた。

「前に、自分のスマホも手汗で水没させたことがあってね。だから、会社の電話を使う時は受話器にハンカチを巻きながら使うようにしてたんだけど、、、それでも、水没させちゃった、、、。信じられないでしょ?手汗で水没って。」

わたしはそう言って、自分に対してフッと笑うと、レモンハイの中に浮かぶ溶けかけた氷を見つめ「本当、恥ずかしい話だよね、、、。若い頃、飲食店でバイトしてた時は、手汗で手を滑らせてコップやお皿を割ったこともあるし、、、今度は会社の電話を水没させた。わたし、、、何の仕事なら、会社に迷惑をかけずに居られるんだろう。もう、、、よく分かんなくなってきちゃった、、、」と、独り言のように言いながら、片手で頭を抱え、一粒の涙を溢した。