いつも君のとなりで


その後もわたしのデスクにある電話だけが鳴らず、偶然一つ余っていた電話と交換してもらい、わたしの電話は業者の人にみてもらうことになった。

そして、業者の人が来てくれたのは次の日で、点検してもらうと、業者の人の口から出てきた言葉は「水没ですね。」だった。

水没、、、

周りの人たちは、「え、何で水没?」と不思議がっていたが、わたしには心当たりがあった。

絶対、手汗のせいだ、、、

わたしは今までに自分のスマホも手汗で水没させたことがあり、それもあって会社の電話を使う時は受話器にハンカチを巻いて使うようにしていたのだが、それでも水没させてしまった。

自分の手汗のせいで、会社の電話まで故障させてしまうなんて、、、

わたしはかなり凹んだ。

その日の休憩時間は、久しぶりに外に出た。

休憩時間に外に出るのは、糸師くんとパスタ屋さんに行って以来だ。

会社の電話を水没させてしまったショックから食欲がなくなり、わたしはビルの外にあるベンチに座り、空を流れる雲を眺めた。

わたしには、何の仕事が合っているんだろう。

この多汗症があっても職場に迷惑をかけない仕事って何?

この調子だと、いつかパソコンまで壊してしまうのではないだろうか。

そう思いながら、視線を地面に落とした時、バッグの中でスマホが振動し始めた。

電話?

そう思い、バッグからスマホを取り出し画面を見てみると、そこには"糸師陽向"と表示されていた。