いつも君のとなりで


そして会社に到着し、車から降りて一緒にビルの中へ入って行くと、周りからの視線と「え?今日は一緒に出勤して来たよ?」「付き合ってるのかなぁ?」という密かに話す声が聞こえてきた。

しかし、そんな視線にも声にも動じない糸師くん。

すると、エレベーター前でエレベーター待ちをしている広人と花村さんが見え、花村さんはわたしたちに気付くと、目を逸らした。

「おはようございます。田岡チーフ、花村さん。」

エレベーター前まで来ると、糸師くんが二人に挨拶をした。

広人と花村さんは糸師くんからの挨拶に気まずそうにしながら、「おはよう。」「おはようございます。」と返していた。

「あ、花村さん。昨日は、食事のお誘い、お断りしてしまって申し訳ありませんでした。」

糸師くんがそう言うと、広人は「えっ?」と驚きながら花村さんの方を向き、花村さんはヤバいというような表情をして目を泳がせた。

「華鈴、、、それ本当?食事に誘ったって、、、」
「あ、違うんです!広人さん!それは糸師さんの勘違いで!」

不信な表情を浮かべる広人に慌てて言い訳をしようとする花村さん。

すると、そんな花村さんに糸師くんは「あ、僕の勘違いだったんですね。それは失礼。じゃあ、田岡チーフを"キープ"と言っていたのも聞き間違いだったんですね。」と言った。

「キープ?」

そう呟く広人と花村さんの間は、明らかに雰囲気が悪くなってしまい、糸師くんはそれ以上は何も言わず、わたしたちは雰囲気が悪くなった広人と花村さんと共にエレベーターに乗った。

その後、12階でエレベーターから降りたわたしたちは、糸師くんとはアイコンタクトを取り、お互いの事務所に入り、広人と花村さんはいつものような仲睦まじい様子も会話もなく、それぞれのデスクにつき、近付く様子もなかった。

お互いにかなりダメージを喰らったらしい。

それを見て、もうそろそろ仕返しはこれくらいにしておこうかな、と思ったわたしなのだった。