わたしはそのあと、ずっとモヤモヤしたまま業務を行なっていた。
あー、ダメだ。
こんな状態で仕事してたらミスしちゃう。
そう分かってはいても、繰り返し頭の中に浮かぶ"気持ち悪い"の言葉と、糸師くんを拒絶するような行動を取ってしまった後悔。
その日、わたしは定時まで自分の気持ちと戦いながら、仕事をこなしていた。
そして定時になり、周りの皆が帰り支度を始める。
わたしも早く帰って、ゆっくりお風呂にでも浸かろうかな。
いや、、、それともまたあのこじんまりした居酒屋に行く?
そんなことを考えながら、デスクの上を片付け立ち上がると、斜め向かいのデスクに居る広人がまだ作業をしていた。
どうやら、まだ業務が残っているらしい。
「田岡チーフ、残業ですか?」
わたしがそう訊くと、広人は「はい、まぁ。」と素っ気ない返事をした。
「いつも花村さんに付きっきりで仕事をしてるから、自分の業務が滞ってるんじゃないですか?そろそろ、花村さんには一人でも仕事が出来るようになってもらってください。」
「、、、はい。」
「それから、明日に回しても大丈夫な仕事があるなら、わたしのデスクに置いといて。手伝いますから。」
わたしはそう言うと、バッグを肩に掛け「それじゃあ、お先に失礼します。」と言い、事務所を出た。
すると、後ろから「松雪主任。」と言う声が聞こえてきた。
えっ?と思いながら、わたしが振り向くと、総務課の入口横の壁にもたれ掛かる糸師くんの姿があった。



