「…あれ?」
気を取り直して図書館の見回りを始めようとしたその時。
さっきまで洸太先輩が座っていた席に何かが置いてあるのを見つけた。
これって…もしかして、劇の台本?
ホチキスで綺麗にまとめられた分厚い紙の束。
途中のページが開かれたまま。
きっと洸太先輩が置いていったに違いない。
早く届けようと手にしたと同時に、文章が目に入ってきた。
『あなただけがわたしの王子様です』
───どきりと胸の奥に言葉が響いた。
この言葉、洸太先輩が考えたのかな…?
本当は早く届けるべき、だろうけど…
気づいた時にはページをめくって、台本を読みはじめていた。
その台本に書いてあったのは、とある国の王子様と そのお城で働く小さな女の子の物語だった。
「『王子様、貴方のお姫様に、なりたいです』──」
台本に書いてあった“お姫様”のセリフを小さく呟いてみる。
…その時、不意に後ろから声がした。
「しずくちゃん」
「ひゃ!?」
聞き慣れた声に驚いて振り向くと、目の前には洸太先輩。
ま、まずい。 こんなの怒られるに決まってる…
「す、すみません、勝手に──」
「ねえ、もう一度読んでみて?」
もう、一回?
もしかして…
「こ、このセリフをですか?」
「うん、こっち向いてもう一度言ってみて」
そ、そんなの恥ずかしすぎるよ…
目を逸らそうにも、先輩は真っ直ぐこちらを見つめている。
…でも、勝手に読んでしまった以上、断るにも断れない。
わたしは覚悟を決め、彼を見つめる。
ええと、セリフは…
