期日指定郵便

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高山 南寿

母と電話で話していて、つい言ってしまった。

「お母さん、私、もう仕事辞めて帰りたい」

「へえ、五月病ってよく言うけど。

本当に辞めたくなるのね。

新幹線代、出してあげるから、

休みの日に帰っておいで」

「わかった。三連休のシフトの時に帰る」



4月、千葉から出て、大阪の図書館に就職した。

念願の司書としての就職だった。

司書は民間の募集は多いけれど、

公共図書館の正職員は少ない。

大阪での募集は、家を出る必要があったけれど、

思い切って受験した。

そして、縁あって就職することになった。

仕事は結構忙しい。

たぶん、まだ慣れていないからだと思う。

どうしても時間がかかってしまう。

任せられている仕事の量は少ないと思うが、

それでもこなせない。

一人暮らしも大変だ。

今まで母に任せきりで、何も手伝ってこなかった。

その報いだ。

22歳だけど、母に甘えて帰ろう。



でも、その願いは叶えられなかった。



母が逝去した。

まだ、55歳だった。

脳卒中だった。

一刻も早く駆けつけたかったが、

すでに息を引き取ったと告げられた。

だから、葬儀の用意をしていくことにした。

黒のスーツ。

パンツにするか、スカートにするか悩んで、

結局スカートの方をバッグに入れた。

それから、数日分の着替えをキャリーバッグに詰めた。

家を出ようとした時、宅配便が届いた。

母が電話で言っていた、田舎でいただいたという野菜だ。

玄関に置いたまま、家を飛び出した。

京都で新幹線に乗り換え、

取り急ぎ東京の母がいる病院へ向かった。