君の世界は眩しかった。【完】

一花sids

ドラマの撮影が終わった帰り道、
ふと立ち寄った書店の棚に、それはあった。

笹浜蓮 初画集『光の欠片たち』

手が勝手に伸びた。

ページをめくると、
初期の暗くて影の濃い絵、
中期の空白と風、
そして、最後のページには、ただ一枚の絵。

青い空に背を向けて歩く、女の子の後ろ姿。

名前も、顔も描かれていない。
でも、なぜだろう。

胸が痛くて、苦しくて、でもどこか、あたたかかった。

「これは、私なんだ」

一花はそう確信して、ページを閉じた。