君の世界は眩しかった。【完】

一花が僕の中に入り込んでくるのに、時間はかからなかった。

廊下ですれ違えば手を振ってきて、授業中もときどき視線を投げてくる。
どれもさりげない。でも、明らかに特別だった。

「蓮くんってさ、美術部なんだよね?」

「うん」

「美術部って、毎日あるの?」

「……ほぼ毎日。展覧会近いから」

「へえ、じゃあ今度、見に行ってもいい?」

驚いた僕に気づいて、彼女は小さく笑う。

「興味あるんだよね、そういうの。絵って、見てるだけで泣きそうになることあるじゃん。……蓮くんの絵、そんな感じだったから」

その言葉は、まるで魔法みたいだった。

誰にも必要とされていないと思っていた自分の存在が、
たったひとりに見つけてもらえたような、そんな気がした。

その日から僕は、美術室に行く理由がもうひとつ増えた。

一花が、また来てくれるかもしれない。
そんな淡い期待が、日々を少しずつ変えていった。