君の世界は眩しかった。【完】

一花sids

その日、私は別の舞台の稽古場にいた。

卒業式には出なかった。
出られなかった、が正しいかもしれない。

“思い出”と決別するには、少しだけ時間が足りなかった。

稽古の合間、スタッフが差し出したスマホ画面に、懐かしい名前があった。

「笹浜蓮、全国学生アートコンテスト入選」

見覚えのある画風。
でも、それは以前の彼のようでいて、まるで違った。

誰かを描く絵ではなく、“景色”がそこにあった。

風と光と、揺れる草原。

その真ん中に、ぽつんと小さな影。
名前のない誰かが、静かに立っていた。

もう、私じゃなくてもいいんだ。

そう思った瞬間、心の奥がふっと軽くなった。