君の世界は眩しかった。【完】

母が家を出ていったのは、小学五年の冬だった。

家に残されたのは、
父と、泣いてばかりの弟たちと、
無理に笑おうとする私。

父は働きづめで、ほとんど家にいなかった。
ご飯も、洗濯も、怒ることも──全部、私の仕事だった。

だから、学校だけが、唯一の“逃げ場所”だった。

蓮と出会ったのは中一のとき。
転校してきたばかりの私に、誰よりも何も言わずに“隣に座ってくれた人”。

「ここ、座っていい?」

「……別に」

たったそれだけで、涙が出そうになったのを覚えてる。