君の世界は眩しかった。【完】

その日、美術準備室で描いていたときだった。

後輩の女子がふいにこんな話を始めた。

「先輩、知ってます?幸野谷一花って人。最近また名前出てきてて」

────その名前に、手が止まった。

「……え?」

「なんか、舞台やるらしいって噂です。芸能の学校の劇団に顔出してるらしくて、演出家が絶賛してるって聞きました」

名前を聞いただけで、喉の奥が焼けるように熱くなる。

一花の名前は、もう聞くこともないと思ってた。

だって、僕は彼女を“置いてきた”はずだったから。

でも、違った。
彼女はまだ“どこかで”生きていた。

何かを、演じて。
誰かに、称賛されて。

なのに、僕だけが、まだ止まったままだ。