君の世界は眩しかった。【完】

それから、二人で話す時間は増えていった。
描きたい風景のこと。将来のこと。些細な毎日。

蓮は一花の名前を出さなかった。
紗月も、自分の「昔の好きな人」の話をそれ以上しなかった。

まるで、お互いの心に触れすぎない優しさを持っているようだった。

そんなある日。

紗月が、小さなキャンバスを蓮に手渡した。

「これ、見せたくて」

それは紗月が描いた“夕暮れの海”だった。
橙と群青が溶け合う、静かな海の景色。

「蓮くんに出会ってから、描ける色が増えた気がするんだ」

言葉が、うまく出てこなかった。
胸の奥が、温かくて、少し苦しくなった。

誰かに、そう言ってもらえたこと。
それが、蓮にとっての“救い”だった。