君の世界は眩しかった。【完】

「私ね、ずっと好きだった人がいたの」

ある日の夕方。
駅前のベンチに座っていた時、紗月がぽつりと呟いた。

「同じ中学だった人で、すごく優しくて、真っ直ぐで……でも、私のことなんて見てなくて」

蓮は黙って、その声を聞いていた。

「告白もしなかった。
だって、どうせ叶わないって分かってたし、
……彼の“好きな人”の顔を、見たことがあったから」

静かに風が吹いて、髪が揺れた。

「その人の笑う顔がすごく綺麗で、
私は一度も、あんなふうに笑えなかったなって思った」

紗月はそう言って、少しだけ笑った。
寂しそうな、でもどこか柔らかな笑顔だった。

「蓮くんも、似たような恋をしてた気がする」

胸が少しだけ、痛くなった。

「……僕のは、もう終わったよ」

「うん。私のも、終わった」

それは、報われない恋を“ちゃんと手放した”人間だけが口にできる言葉だった。