君の世界は眩しかった。【完】

夏休み直前の終業式の日。
僕は、廊下ですれ違ったある女の子に声をかけられた。

「…あなたが、笹浜蓮さん?」

振り返ると、そこには見慣れない制服の女子生徒。
ショートカットで、涼しげな目をしていた。

「……誰、ですか?」

「ごめん、突然。私、他校の美術部なんだけど……」

そう言って、彼女は一枚の冊子を差し出してきた。
表紙には、《未来の風景展・入選作品集》の文字。

そこに、僕の描いた《君の世界は眩しかった》が載っていた。

「この絵、すごく好きで。展示会で偶然見て、何回も観に行ったんだ。……どうしても、描いた人に会いたくて」

僕は少し戸惑いながらも、受け取った。

「……ありがとう。でも、あの絵は……もう、僕のじゃないんだ」

「……そうなんだ」

彼女は、ほんの少しだけ悲しそうに微笑んだ。

「でもね。誰かに届いたってことは、きっと、描いた意味があったってことじゃない?」

その言葉に、心が静かに揺れた。

報われなかったとしても、“残した何か”が誰かの心を動かすことがある。

僕はそのとき、ようやく少しだけ、絵を描く理由を見つけられた気がした。