君の世界は眩しかった。【完】

その絵が展示されている市の美術館に、僕は一人で足を運んだ。

静かな展示室。
光の差し込む先に、僕の絵が飾られていた。

タイトル《君の世界は眩しかった》

その前で、見知らぬ誰かが立ち止まっていた。

「すごい……なんか、切ないな」

その人はそう呟いて、何度も絵を見返していた。

僕は、少しだけ嬉しかった。
知らない誰かが、彼女のことを“美しい”と思ってくれたことが。

そして、同時に思った。

「……もう、この絵は“僕たちのもの”じゃないんだ」

展示された瞬間から、絵は“誰かの目”に晒されて、誰かの心の中に入っていく。

そのとき僕は、やっと少し、気づいた。

僕だけが“止まっていた”んじゃなくて、
彼女もまた、止まらないように必死だったんだと。

あの春、彼女が何を捨てて、何を選んだのか──
ようやく、ほんの少し理解できた気がした。