君の世界は眩しかった。【完】

四月の終わり。
教室の窓から見える桜が、風に舞っていた。

あれから一花とは、何度か言葉を交わしたけれど、以前のような空気には戻れなかった。

近いのに、遠い。
話せるのに、触れられない。

そんな日々のなかで、僕は一つ、決めたことがあった。

「描こう。最後に、一花をちゃんと描こう」

美術室に一人残って、真っ白なキャンバスに筆を取った。
思い出すのは、たくさんの“彼女”。

泣いた顔。怒った顔。
楽しそうに笑った顔。
夢に向かっていた、強い背中。

でも僕が描きたかったのは、そのどれでもない“今の一花”だった。

──もう、僕のものじゃない彼女。
だけど、それでも美しいと思った彼女。

筆先が震えて、少しだけ絵の輪郭が滲んだ。

涙は落ちてないはずなのに、視界がにじんで、うまく描けなかった。