君の世界は眩しかった。【完】

放課後の帰り道、偶然彼女とすれ違った。

「……あ、蓮くん」

彼女は笑っていた。前と変わらない笑顔で。

「最近、美術室行ってないや。ごめんね」

「……ううん、忙しいでしょ」

「ちょっとだけね。新しい台本もらって、覚えることがいっぱいで……でも、すごく楽しいの」

その声には、本当に嘘がなかった。

「ねえ、蓮くん。
私ね、もう少ししたら東京に行くかもしれないんだ。劇団の稽古所がそっちにあって。夏には引っ越すかもって話で」

心臓が、一瞬止まった気がした。

「……そうなんだ」

「うん。現実になってきたんだよね、ずっと夢だったことが。……なのにさ」

一花はふと、足を止めて言った。

「最近、たまに泣きたくなるの。自分でも意味わかんないのに、急に寂しくなって」

それはきっと、“君が選んだ未来の代償”だ。

その言葉を、喉の奥で飲み込んだ。

「大丈夫。……それでも、君は前に進んでる」

「……蓮くんは、進まないの?」

僕はその言葉に、うまく答えられなかった。