君の世界は眩しかった。【完】

一花の舞台初日は、雪が降った。

「観に来てほしい」と渡された招待券は、今も机の引き出しに眠ったままだった。

行かなかった。

いや──怖かったんだ。
彼女が、僕の知らない顔でステージに立つことが。

「……すごかったよ。幸野谷一花。まじで、別人だった」

翌日、教室の誰かが話していた。

「ヒロインってあんなに存在感出せるんだな。やっぱ、普通じゃないよな」

普通じゃない。
届かない。

その言葉が、また僕を遠ざけていく。

美術室で、一人描いていた絵。
そこには、もう彼女の姿を描けなかった。

代わりに現れたのは、背を向けた女の子のシルエットだった。

長い髪、細い肩。

だけど──振り返らないまま、彼女はどこかへ歩いていく。

“どうしてだろう。
君の夢を、誰より応援していたはずなのに。”

なのに。
気づけば僕は──

彼女の幸せが、少しだけ怖くなっていた。