君の世界は眩しかった。【完】

その日以来、一花は少しずつ、自分の夢の話をするようになった。

「高校出たらさ、本気で劇団のオーディション、受けてみようと思うんだ」

「応援するよ」

「ありがとう。でも……それで家が壊れたら、どうしようって、ずっと思ってる」

彼女の中には、夢と現実、両方を背負う強さがあった。
でもその分、脆さも抱えていた。

「お父さんは、仕事ばっかで、家のこと全然知らない。
私がいなきゃ、弟たちは何もできない。……でも、私だって、私の人生を生きたいよ」

“わがままかな?”と笑うその顔は、涙を堪えるように見えた。

「わがままじゃないよ。……それが、普通だ」

僕には、親はいない。
中学生のときに、両親は事故で亡くなった。
それ以来、祖母に育てられてきたけど、どこか心がすれ違ったままだった。

何も期待されないかわりに、何も与えられない。

そういう生き方を選んできた。

「僕は……君が、夢を諦めてほしくない」

「……怖いよ。叶うかどうかじゃなくて、叶えてから、壊れるのが」

「それでも。君が舞台に立つ姿を、見たいって思った。……僕だけじゃなく、きっと、誰かも」

一花は、そっと目を閉じていた。

言葉は返さなかった。
でも、その沈黙は、きっと“約束”に近い何かだった。