ここから見える世界は。

「ほらまたからかって~。そういうのは、本当に好きになった人に言うんです。結城さん頭いいくせに、こういうの上手じゃないですよね。」
「俺、そんなに恋愛慣れてるわけじゃないし。」
「どの口が言ってるんですか。」
「この口が言ってるけど?」
どんなに仲良さげな会話を交わしても、私と結城さんの間には、物理的な距離があった。もし同じ福岡にいれば、きっと土日も会うことができたのだろう。もっと簡単に仲が深まったのだろう。ただ、あの日の食事を境に、連絡だけは毎日取るようになった。「今、会食の帰りなんだよね」と言っていつもより高い声で電話が突然かかってきたり、「暇だから電話しよう」とかメッセージが届いて、どちらかが寝るまで電話したりすることもあった。私も、そんな関係が心地よかったし、就活で疲れ切っていた心を癒すために、「結城さんの声が聴きたいです。」なんて言って、電話することもあった。長く続く会話の中で、お互いの恋愛観の話にもなった。

「宮野は遠距離恋愛できる人?」って聞かれたときは、その言葉の裏側にある本心を知りたくて、もどかしさを感じることもあった。そして、私の就活も順調に進んでいって、6月末には、無事内定をもらうことができた。

最終面接の日。結城さんの話では、一週間以内に内定が出るってことだったけど、面接から2時間後に、内定の電話とメールが来た。自分の努力が報われた気がして、そしてまた、自分という存在が社会から認められた気がして、嬉しかった。そんなとき一番に連絡をしたのは、家族でもなく、友達でもなく、結城さんだった。
【結城さん!!!内定もらいました~!!】
【おめでとう!じゃあ、今日は予定通り祝い飯だな~】
【結城さんの仕事終わるまで、東京駅で時間つぶしときます。】
【18時半に、丸ビル前に来てくれる?そこで合流してそのまま飯行こ】
【分かりました。楽しみにしてます!】