過去に戻れるボタンの話。

 これまで、何度も立ち止まってきた自分。失敗だと決めつけた過去に振り回され、頑張ってきた自分を認めてあげられていなかった。どうすればその過去をなかったことにできるのか、そんなことばかり考えて、そして、うまくいっていない今ばかり考えて、解決策は何も考えずに、自分を見てあげることをやめてしまっていたのだ。いつの間にか、他者の評価ばかり気にして、目の前の本当にすべきことを、心を込めて取り組むことができていなかったのだ。

 小さな家の中は、静寂に包まれた。「あなたの選択を、応援します。」さっきまで機械的に聞こえた女性の声が、温かみのある声で耳に入ってきた。
 「まもなく、本日の最終電車です。日比谷線、中目黒方面へお乗りのお客様は、お急ぎください。」駅員さんの声が、外から聞こえてくる。日常の音が、耳に入ってくる。