時計の針は、23時50分を指していた。東京の夜景は、残業している人の灯だなんて言葉を聞いたことがある。まさにその通りで、今日も東京の夜景の一部になってしまっている私。

 「そろそろ帰ろう」0時過ぎの終電に乗るためには、いい加減に会社を出ないと間に合わない。都心にある本社では、千人以上が働いているらしい。だだっ広い整頓されたオフィスに、同じように残業している人は……今日の夜はいなかった。なぜなら、世間はクリスマスイブなのだから。街中が浮ついている日に、終電ギリギリまで残業をしている理由なんて、思い出したくもないくらい惨めなものだ。