愛ゆえに。【完】

それから、優羽のもとを去った。

本名も、偽名も捨てた。
どこへ行っても、あの人の声が脳裏に響いた。

「……愛してたよ。きっと、本当に」

そう言ってくれたあの夜だけが、私の永遠だった。
たとえ嘘でも、それでよかった。
あの人の世界に、私はもういらない。
だけど、私の世界には──
最初から最後まで、優羽しかいなかった。