愛ゆえに。【完】

数日後、警察が動いた。
兄の事件に進展があったと、ニュースが流れた。

「再捜査……だって」

優羽がぽつりと呟いたその声は、冷たかった。
私は、全身が凍りつくような恐怖に襲われた。

「乃亜ちゃんって、……一ノ瀬 乃亜、だったりする?」

笑っていた。優羽は、笑っていたのに――目は、笑っていなかった。

私は、何も言えなかった。
言葉を失った私に、優羽は静かに言った。

「……ありがとう。守ってくれたことも、傍にいてくれたことも」

「でも、これ以上は……もう、無理だよ」

私はその言葉で、心のすべてが崩れ落ちた。

「愛してるのに、届かないんですか……?」
「こんなに、あなたを守って、支えてきたのに……」

「ごめんね」

その一言が、私の命を切り裂く刃になった。